古文翻訳装置ちゃんに聞いてみると……
雪にも夏の暑さにもまけてしまう
……と翻訳されました。てか
えぇーっ、負けちゃうのかよ。
宮沢賢治さんごめんなさい。
さて、なんでこんなことになるのか、以下、古文の勉強です。
ちゃんと勉強している人はもうわかったと思いますが、これは
「ぬ」の識別の問題ですね。宮沢賢治は「マケヌ」の「ヌ」を、
打消の助動詞「ず」の連体形として書いています。しかしながら、古文翻訳装置ちゃんはこの「ヌ」を、
完了の助動詞「ぬ」の終止形として訳してしまいました。
「ぬ」の識別のポイントは、「~まけぬ丈夫な体を~」のように「ぬ」の後に体言がつながっていれば打消の助動詞、「まけぬ。」のように文章が終わっていれば完了の助動詞という判断をすることです。古文翻訳装置でもその処理は取り入れているのですが、今回の文章の場合、
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
という具合に2行に分かれていたので、古文翻訳装置ちゃんは「マケヌ」で文章が終わっていると判断してしまったのでした。ちなみに「雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ丈夫ナカラダヲモチ」のように1行にしてやれば、正しく判断してくれるはずです。
「ぬ」の識別は試験でも頻出です。なんか記憶が……って人はこの機会に復習しておきましょう。
ちなみにですが、打消の助動詞「ず」の上の動詞は未然形、完了の助動詞「ぬ」の上の動詞は連用形ですので、未然形と連用形の異なる動詞は識別の問題になりません。たとえば四段活用の動詞だと「思はぬ(打消)」と「思ひぬ(完了)」のように、上の動詞の活用で判断できます。
ついでにカ行変格活用の「来」なんかが出てくるとちょっとややこしくて、「こぬ(打消)」と「きぬ(完了)」で読みが違いまが、漢字表記にすると両方とも「来ぬ」となってしまってこれまた識別の問題です。「来ぬ秋」の「来」の読み方を答えなさいなんていう変化球的問題も出題されたりします。この場合、「秋」という体言に接続している「ぬ」ですから打消の助動詞「ず」の連体形ということになり、打消の助動詞「ず」は未然形接続ですから、その上の動詞は未然形ということになります。つまり「こぬあき」と読むのが正解で、答えは「こ」となります。
あーややこしい。
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