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このシリーズでは百人一首を順に解説しています。
ゆくゆくは百首全ての解説を目指します。
[ 歌 ]
第十二句 天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ
僧正遍昭(そうじょうへんじょう)
[ 現代語訳 ]
空を吹く風よ、雲の通り道を吹き閉じてくれ (その道を通って帰って行ってしまう)乙女(天女)の姿を少しの間(この場所へ)とどめておこう
[ 品詞分解 ]
天つ風【名詞】 雲【名詞】 の【格助詞】 通ひ路【名詞】 吹き【カ行四段活用動詞「吹く」連用形】 とぢよ【ダ行上二段活用動詞「とづ」命令形】 乙女【名詞】 の【格助詞】 姿【名詞】 しばし【副詞】 とどめ/む【マ行下二段活用動詞「とどむ」未然形+意志・推量の助動詞「む」終止形】
[ 文法 ]
・三句切れ。
・風を人に見立てて雲の通い路を吹き閉じるよう頼んでいる(擬人法)。
[ 読み人 ]
僧正遍昭
六歌仙及び三十六歌仙に数えられる歌の名手で、平安時代に活躍した。桓武天皇の孫であり、仁明天皇に使えて宮中の儀式等を司る蔵人所の長官(蔵人頭)まで出世したが、仁明天皇が崩御した後、35歳で出家して僧侶となった。なお、百人一首21首目の詠み人である素性法師の父である。
[ 決まり字 ]
3字
[ 解説 ]
最終的には出家して僧侶となった僧正遍昭であるが、この歌はまだ宮中にお仕えしていた頃に詠んだ歌である。毎年11月に宮中で行われる新嘗祭り(にいなめまつり)で演じられる「五節の舞(ごせちのまい)」が題材。五節の舞とは、その昔、天武天皇が吉野へ行幸した際に、天女が降りてきて舞ったという伝説に基づいた踊りであり、実際の五節の舞では公家の娘などが舞っていたようだ。ただ、僧正遍昭はおそらくその伝説を知っていたのだろう。そこで、舞を舞う娘たちを天女になぞらえ、この舞をずっと見ていたいという気持ちから、天女が帰ってしまわないよう、帰り道を閉ざしてくれと風に呼びかける歌を作ったと思われる。PR
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