[ 歌 ]
第七句 天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
阿倍仲麻呂(あべのなかまろ)
[ 現代語訳 ]
大空を遠く仰ぎ見ると見える月は、昔見た、春日の三笠山に出た月と同じ月であるのだなあ
[ 品詞分解 ]
天の原【名詞】 ふりさけ【カ行下二段活用動詞「ふりさく」連用形】 見れ/ば【マ行上一段活用動詞「見る」已然形+接続助詞】 春日【名詞:春日】 なる【存在の助動詞「なり」連体形】 三笠【名詞】 の【格助詞】 山【名詞】 に【格助詞】 出で/し【ダ行下二段活用動詞「出づ」連用形+過去の助動詞「き」連体形】 月【名詞】 かも【終助詞】
[ 文法 ]
・「春日なる」の「なる」は存在の助動詞で「春日(今の奈良県)にある」と訳す。
・「出でし月かも」の「かも」は終助詞で、しみじみと感じ入っている様子を表す。
[ 読み人 ]
当時は唐という国が支配していた今の中国大陸で、官僚を務めた日本人である。当時の官僚試験は非常に難易度が高く、それに合格したと言うことはかなりの天才だったと言えよう。日本で生まれ、10代の頃に中国大陸に渡った後は、二度と日本へと帰ることはなかった。何度か日本に帰ろうとするも、船の難破などで帰国を果たせず、唐の地で亡くなっている。百人一首に取り上げられている歌は、唐の地で月を見て、故郷を思い出しながら詠んだ歌である。
[ 決まり字 ]
3字
[ 解説 ]
この歌を理解するには、日本への帰国を試みつつも果たせず亡くなった作者、阿倍仲麻呂の人生について知っておく必要がある。この歌は、日本への帰路に詠んだ歌とされており、これから帰ろうとしている故郷を思って詠んだ歌なのである。帰国途中に見えた月は、昔故郷で見た月と同じであり、これからその故郷に帰ると思うと、非常に感慨深いものがあると感じ入っている様子がうかがえる。
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