[ 現代語訳 ]
山鳥の尾のように長い夜を、ひとりで寂しくねるのだろうなあ。
[ 品詞分解 ]
あしびきの【名詞】 の【格助詞】 山鳥【名詞】 の【格助詞】 尾【名詞】 の【格助詞】 しだり尾【名詞】 の【格助詞】 ながながし【ク活用形容詞「ながながし」終止形】 世【名詞】 を【格助詞】 ひとり【名詞】 か【係助詞】 も【係助詞】 寝/む【ナ行下二段活用動詞「寝」未然形+意志・推量の助動詞「む」連体形】
[ 文法 ]
・「あしびきの」は「山」に係る枕詞。
・「ひとりかも寝む」の「か」と「寝む」で係り結び。「寝む」は連体形。
[ 読み人 ]
柿本人麻呂は万葉の歌人で、三十六歌仙のひとり。歌聖と言われる万葉歌の第一人者である。記録が残っていないため、生年や没年など多くが謎に包まれているが、万葉集などの歌集に多くの歌を残している。枕詞などの技法を駆使した歌が多いのが特徴。百人一首に選ばれた歌も、最初の一七文字を序詞として用いており、その特徴が現れている。
[ 決まり字 ]
2字
[ 解説 ]
山鳥のつがいは、昼間一緒に行動するが、夜になると別れて眠ると古くから言われており、夜ひとりで居る寂しさを象徴するものとして歌には良く登場する。また、山鳥の尾は非常に長く、その長さと夜の長さを重ね合わせている。そして、その山鳥の尾のように長い夜を、山鳥のようにひとり寝るのだなぁと、自分の様子を山鳥に例えて詠んでいる歌である。「あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の」までは後半を導くための序詞で、この歌は序詞を用いた歌の典型例である。
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