このシリーズでは百人一首を順に解説していきます。
ゆくゆくは百首全ての解説を目指します。
[ 番号 ]
第二十六句
[ 歌 ]
小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ
[ かな ]
をぐらやま みねのもみぢば こころあらば いまひとたびの みゆきまたなむ
[ よみ ]
おぐらやま みねのもみじば こころあらば いまいとたびの みゆきまたなん
[ 現代語訳 ]
小倉山の峰のモミジの葉が趣を理解するならば、もう一回の天皇のおでかけまで散らずに待っていてほしい
[ 品詞分解 ]
小倉山【名詞】 峰【名詞】 の【格助詞】 もみぢ葉【名詞】 心【名詞】 あら/ば【ラ行変格活用動詞「あり」未然形+接続助詞】 今【副詞】 ひとたび【名詞】 の【格助詞】 みゆき【名詞】 待た/なむ【タ行四段活用動詞「待つ」未然形+願望の終助詞】
[ 文法 ]
・紅葉の葉に心があるならば…と、紅葉の葉を人にたとえた擬人法を使用している。
・高校古文の問題の中で聞かれることはまず無いが、この歌中の「今」は名詞ではなく副詞。
・待たなむ。の「なむ」は願望の終助詞。品詞識別でよく出題される重要語。
[ 読み人 ]
貞信公(ていしんこう) [男性]
藤原忠平のこと。平安中期に生きた貴族で、貞信公は亡くなった後に送られた名前(おくり名)である。行政のトップである右大臣や、天皇を補佐する関白を務めるなど、重職を歴任した。享年70歳と当時としては長命であった。
[ 決まり字 ]
2字
[ 解説 ]
勅撰和歌集「拾遺集」に紹介されており、当時の上皇とともに、紅葉の名所として名高い京都の小倉山で出かけた際に、上皇が子である天皇も見に来るべきだと言ったのを受けて詠んだ歌と記されている。小倉山は現在でも紅葉の名所として知られており、秋には国内外から多くの観光客が訪れる。
なお、決まり字は2字であるが、「を」から始まるのは百人一首の中でこの歌のみである。読み上げられる際は他の「お」から始まる歌と区別できないため。
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