このシリーズでは百人一首を順に解説していきます。
ゆくゆくは百首全ての解説を目指します。
[ 番号 ]
第二十句
[ 歌 ]
わびぬれば 今はた同じ 難波なる みをつくしても あはむとぞ思ふ
[ かな ]
わびぬれば いまはたおなじ なにはなる みをつくしても あはむとぞおもふ
[ よみ ]
わびぬれば いまはたおなじ なにわなる みをつくしても あわんとぞおもう
[ 現代語訳 ]
(愛するあなたに会うことが出来ず)つらく思っているので、今はもう(身が絶えてしまったのと)同じことだ。大阪にある澪標の名前のようにこの身を絶やしてでも(あなたに)あおうと思う。
[ 品詞分解 ]
わび/ぬれ/ば【バ行上二段活用動詞「わぶ」連用形+完了の助動詞「ぬ」已然形+接続助詞】 今【名詞】 はた【副詞】 同じ【シク活用形容詞「同じ」終止形】 難波【名詞】 なる【存在の助動詞「なり」連体形】 み【名詞】 を【格助詞】 つくし/て【サ行四段活用動詞「つくす」連用形+接続助詞】 も【係助詞】 あは/む【ハ行四段活用動詞「あふ」未然形+意志・推量の助動詞「む」連体形】 と【格助詞】 ぞ【係助詞】 思ふ【ハ行四段活用動詞「思ふ」連体形】
[ 文法 ]
・「同じ」でいったん文が切れる二句切れ。
・「難波」と「みをつくし」は縁語。
・「難波なる」の「なる」は「難波に存在する○○」という意味を表す存在の助動詞
・「みをつくし」は「身を尽くし(身を滅ぼし)」と「澪標」のかけことば。
・「あはむとぞおもふ」は係り結び。「ぞ」でかかって「思ふ」で結ぶ。よって「思ふ」は連体形。
[ 読み人 ]
元良親王(もとよししんのう) [男性]
陽成天皇の第一皇子。 平安時代に生きた好色の男性として知られる。大和物語や今昔物語、徒然草にも登場し、恋の歌が数多く残っている和歌の名手でもある。百人一首にも第20句として恋の歌が取り上げられている。
[ 決まり字 ]
2字
[ 解説 ]
宇多上皇の御息所であった藤原褒子(ふじわらの ほうし)への思いを歌った歌。元良親王は褒子と恋愛関係にあったが、そのことが上皇の知る所となって会うことが出来なくなってしまい、そのつらい気持ちを歌にしている。「澪標」と「身を尽くし」の掛詞は和歌に良く用いられ、抑えることの出来ない強い愛の気持ちを表現している。
PR