このシリーズでは百人一首を順に解説していきます。
ゆくゆくは百首全ての解説を目指します。
[ 番号 ]
第二十九句
[ 歌 ]
心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花
[ かな ]
こころあてに をらばやをらむ はつしもの おきまどはせる しらぎくのはな
[ よみ ]
こころあてに おらばやおらん はつしもの おきまどわせる しらぎくのはな
[ 現代語訳 ]
あてずっぽうに折るのなら折ってみようか、初霜が降りて、その白さで見分けがつかなくさせている白菊の花を。
[ 品詞分解 ]
心あて【名詞】 に【格助詞】 折ら/ば/や【ラ行四段活用動詞「折る」未然形+接続助詞+係助詞】 折ら/む【ラ行四段活用動詞「折る」未然形+意志・推量の助動詞「む」終止形】 初霜【名詞】 の【格助詞】 おきまどはせ/る【サ行四段活用動詞「おきまどはす」已然形+完了の助動詞「り」連体形】 白菊【名詞】 の【格助詞】 花【名詞】
[ 文法 ]
・「折らむ」の「む」を連体形として文を続けることも文法上は可能であるが「折るような初霜」と文を続けると意味が通らないことから「二句切れ」とし、分けて考える。
・「折らばや」を「ラ行四段活用動詞「折る」未然形+終助詞」と見ると「折り曲げたい」という意思を表すと解釈することも可能ではあるが、ここでは文が続いていることから、終助詞よりも接続助詞+係助詞の「ばや」が適当である。
・本来は「白菊の花」を「折らばや折らむ」であるところ「倒置法」を用いている。
・最後は「白菊の花」で「体言止め」
[ 読み人 ]
凡河内躬恒(おおしこうちのみつね) [男性]
平安時代前期の歌人。三十六歌仙のひとり。官僚であり、淡路や和泉などの地方官僚職を歴任したが、大きな出世はしなかった。歌人としては大きな業績を残しており、古今和歌集などに多くの歌が残る。家集に「躬恒集」がある。
[ 決まり字 ]
4字
[ 解説 ]
初霜の白さと、白菊の白さを重ね合わせ、初冬の情景を詠んだ歌である。実際には、白菊が見えなくなるほどの初霜が降りることはないであろうが、印象的な情景を敢えて大げさな表現も用いて歌にしていると思われる。
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