[ 現代語訳 ]
紅葉が散る山奥で、その紅葉を踏みわけて鹿が鳴いている。その声を聞くと秋の悲しさがますます強く感じられる。
[ 品詞分解 ]
奥山【名詞】 に【格助詞】 紅葉【名詞】 踏みわけ【カ行下二段活用動詞「踏みわく」連用形】 鳴く【カ行四段活用動詞「鳴く」連体形】 鹿【名詞】 の【格助詞】 声【名詞】 聞く【カ行四段活用動詞「聞く」連体形】 時【名詞】 ぞ【係助詞】 秋【名詞】 は【係助詞】 悲しき【シク活用形容詞「悲し」連体形】
[ 文法 ]
・声聞く時「ぞ」 秋は「悲しき」で係り結び。
[ 読み人 ]
三十六歌仙のひとり。記録がほとんど残っておらず、その素性は謎が多い。「猿丸」が名字で「大夫」が名前かと言えばそうではなく、大夫とはある程度高い官位にある(五位以上)の男性官吏を指す称号であり、実際の所名前もよくわかっていない。そもそも、実在した人物なのかすら定かではない。柿本人麻呂と同一自分つではないかという説もある。しかしながら、各地に伝説は残っており、猿丸太夫を祭った神社や猿丸大夫の墓などを見ることが出来る。
[ 決まり字 ]
2字
[ 解説 ]
秋の物寂しさを詠んだ歌。鹿にとって秋は恋の季節であり、この歌に詠まれた鹿の声とは、牡鹿が牝鹿を求めている声と思われる。人里離れた山奥で、恋の相手を求めて鳴いている鹿の様子を自分と重ねあわせ、秋という季節が持つ寂しさを、より強く感じている様を呼んだ歌である。
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