このシリーズでは百人一首を順に解説していきます。
ゆくゆくは百首全ての解説を目指します。
[ 番号 ]
第三十八句
[ 歌 ]
忘らるる 身をば思はず ちかひてし 人の命の 惜しくもあるかな
[ かな ]
わすらるる みをばおもはず ちかひてし ひとのいのちの をしくもあるかな
[ よみ ]
わすらるる みをばおもわず ちかいてし ひとのいのちの おしくもあるかな
[ 現代語訳 ]
忘れられる私の身はなんとも思わないが、私をずっと愛すると神に誓ったあなたの命が(神罰で縮んでしまうと思うとそれは)もったいないことであるよ
[ 品詞分解 ]
忘ら/るる【ラ行四段活用動詞「忘る」未然形+受身の助動詞「る」連体形】 身【名詞】 を/ば【格助詞+係助詞「は」の濁音化】 思は/ず【ハ行四段活用動詞「思ふ」未然形+打消の助動詞「ず」終止形】 ちかひ/て/し【ハ行四段活用動詞「ちかふ」連用形+完了の助動詞「つ」連用形+過去の助動詞「き」連体形】 人【名詞】 の【格助詞】 命【名詞】 の【格助詞】 惜しく【シク活用形容詞「惜し」連用形】 も【係助詞】 ある/かな【ラ行変格活用動詞「あり」連体形+詠嘆の終助詞「かな」】
[ 文法 ]
・二句切れ
[ 読み人 ]
右近(うこん) [女性]
平安時代を生きた女流歌人。生没年は不詳。右近は本名ではなく、父の官職名に由来する。醍醐天皇の中宮穏子に仕えた女房。百人一首第43句の詠人である権中納言敦忠とも恋仲で、この歌はその敦忠のことを詠んだものとされる。
[ 決まり字 ]
3字
[ 解説 ]
かつては相愛の関係であったが、心変わりしてしまった男性に対して詠んだ歌。心変わりされてもなお相手の身を案じる健気な女性の歌とも見えるし、心変わりした相手に対して皮肉を込めて詠んだ歌とも取れる。
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